テキスト版の注記の書き方は、「注記一覧」にまとめています。
http://www.aozora.gr.jp/annotation/
その問題点について、検討します。
注記記法の問題点
開始/終了型の欠け
本文の脇に小さな文字でそえられるルビを、青空文庫では、二つの記法を用いて入力している。
ふりがなには、「《》」。
説明には、「●●[#「●●」に「○○」の注記]」。
http://www.aozora.gr.jp/annotation/etc.html#ruby
ところが、後者には、外字注記がらみで、XHTMLへの変換がうまく行われないケースがあると明らかになった。
被ルビ文字内に外字注記が入る場合:ルビタグに変換されず、注記がそのまま残る。
例:※[#「春-日」、第4水準2-5-30]空文庫[#「※[#「春-日」、第4水準2-5-30]空文庫」に「ママ」の注記]
ルビ文字内に外字注記が入る場合:文字が消失する。
例:大空文庫[#「大空文庫」に「マ※[#二の字点、1-2-22]」の注記]
坂本竜馬「手紙」に、これに該当するケースが頻出する。
形を作って公開にこぎ着けるため、点検グループで協議して、問題を生じないルビ記号で処理し、ファイル末に、「※注記が相当の「|諠※[#「口+椛のつくり」、第4水準2-3-87]《(喧嘩)》」をルビとして処理しました。」などと書くことにした。
弥縫策である。
外字が絡んでも、XHTMLへの変換が可能な記法を用意しておかない限り、問題は解決しない。
外字注記が絡む場合の選択肢として、一覧に記載した注記には、開始/終了型を設けることを原則とした。
にもかかわらず、説明的なルビの記法に、開始/終了型を設けて、変換プログラムを対応させなかったことが、坂本竜馬「手紙」で明らかになった問題の原因である。
では、どうするか。
開始/終了型を想定するとすれば、以下のような形か。
[#「○○」の注記]……[#注記終わり]
▼ここから富田追記
上に示した叩き台に、twitterで@KAN0Uさんから「ルビと同じく後ろに(終了側に注記を)記述したほうが読みやすく感じます」とコメントがついた。
[#注記]……[#「○○」の注記終わり]
あるいは、長くはなるが、わかりやすさをとって、次の様な形か。
[#ルビ注記]……[#「○○」のルビ注記終わり]
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/4
[#ルビ注記]……[#「○○」のルビ注記終わり]
で行きましょうか。
前方参照型の以下には、「ルビ注記」という言葉を入れていません。
……[#「……」に「○○」の注記]
その意味では、対称性を崩してしまうのですが、「注記」〜[注記終わり]では、直感的な把握が難しい気がするので。
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 2010/10/4
注記記法の追加変更は、極めて慎重に行われること、追加変更した場合であっても未対応のリーダーで表示したときに
齟齬を来さない形であることを強く希望します。
また、被ルビ文字内やルビ文字内に外字注記が入る場合の変換に不具合があるのは、青空文庫で用いている
txt2xhtmlツールという特定の実装の問題と考えられるため、@KAN0U さんからの修正パッチ(素晴らしい!)で
ツールを修正することにより、喫緊の問題には対処可能なはずです。
その上で、前方参照型だけではなく、開始/終了型も用意するということであれば、以下のように考えます。
[#割り注]……[#割り注終わり]など、他の開始/終了型注記では、開始タグの内容がその場所から始まる
スタイルなので、テキストエディタ等で読む方も「ここから割り注が始まるのか」と素直に読み進められます。
しかし、
[#ルビ注記]……[#「○○」のルビ注記終わり]
例: 吹[#ルビ注記]喋[#「ママ」のルビ注記終わり]
という記法は、そこからルビの形の注記が始まるわけではないため、注記規則を知らない方が読んだときに
混乱するのではないかと思います。
意味を明確に示すのであれば、以下のようになるのではないでしょうか。
[#注記対象]……[#「○○」の注記対象終わり]
吹[#注記対象]喋[#「ママ」の注記対象終わり]
読んだときの印象をイメージしやすいように、具体的な形で候補を挙げてみます。
・前方参照型
・開始/終了型
- 吹[#ルビ注記]喋[#「ママ」のルビ注記終わり]
- 吹[#注記ルビ]喋[#「ママ」の注記ルビ終わり]
- 吹[#注記対象]喋[#「ママ」の注記対象終わり]
- 吹[#注記]喋[#「ママ」の注記]
- 吹[#]喋[#「ママ」の注記]
最後の二つは、終了タグが「~終わり」というスタイルから外れますが、一つの案として挙げました。
仮に、ルビに置き換えて考えてみて、
吹[#ルビ]喋[#「ちよう」のルビ終わり]
とマークアップされていたら違和感があるように(終わるのはルビではなく親文字だから)、
今回の注記についても、[#「○○」の注記終わり]より[#「○○」の注記]である方がすっきりすると
考えました。
「ママ」などの注記の親文字が始まる位置を指示するために、ルビの親文字開始位置を示す「|」のような
記号を使えれば良いですが、今からそうした一文字の記号を割り当てるのは困難なので(未対応の
リーダーで表示したときに消えてくれないといけないので)、注記親文字の開始を示すものとして、
[#注記]や最低限まで切りつめた[#]で示しました。人間の読者の可読性は高いと思います。
ただし、[#注記]の場合、読者が「そこから注記が始まるのか」と思って読んでしまう可能性があるため、
そうした意味を消した[#]、もしくは意味を明確にした[#注記対象]を開始タグとしてはいかがでしょうか。
「ママ」などの注記を表す用語についてですが、
- 「ルビ注記」:ルビ(に対する)注記?、ルビ(の形をした)注記?
- 「注記ルビ」:注記(に対する)ルビ?、注記(の形をした)ルビ?
と、これらは内容の捉え方にブレが生じる気がします。
個人的な感覚では、「ルビ注記」よりは「注記ルビ」の方が、指し示している内容の誤解のされ方が
少ないかなと思います。しかし、このあたりは、人それぞれでしょうね。
(もし「ルビ注」となっていたら、たとえそれが造語であっても、他の「○注」との類推で分かりやすいのですが。)
「ママ」などの注記を意味する「~注」(脚注、後注、傍注のような)という用語はないものでしょうか。
以上、いくつかの候補を挙げましたが、開始タグで始まるマークアップの意味内容が明確である点で、
[#注記対象]を開始タグとするのが良いと思います。
終了タグについては、「ルビのような形で表現する注記」以外のスタイルでの注記で、
今回のタグでカバーすべきものがありうるのなら、
[#「○○」のルビ形式注記対象終わり]
なども考えられるかもしれません。そこまで考えなくてよければ、
[#「○○」の注記対象終わり]
で良いのではないでしょうか。
ところで、ルビ文字に対する「ママ」注記に今回の開始/終了型を適用する場合はどうなるでしょうか。
(現在の記法では以下のようになっています。)
お湯《ゆう》[#ルビの「ゆう」はママ]
また、合印の記法はどうするのでしょう。
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/5
2SC1815Jさんから以下の提案があったと、各所で報告しました。
[#注記対象]……[#「○○」の注記対象終わり]
これに対し、被ルビ文字の左に付いたものを、開始/終了型で書く場合があると、satokazzzさんからしてきがありました。
http://twitter.com/satokazzz/status/26422060629
確かに、左パターン込みで、書き方を決める必要があります。
最初に戻る形になりますが、satokazzzは、次の形を推奨されています。
[#(左に)「○○」の注記]……[#注記終わり]
http://twitter.com/satokazzz/status/26425138655
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 2010/10/05
[#(左に)「○○」のルビ注記]……[#ルビ注記終わり]
[#(左に)ルビ注記]……[#「○○」のルビ注記終わり]
という記法には違和感がある(論理的におかしい)という感覚は共有できているでしょうか。
(具体例を考えずに、上記の字面だけ見ていると違和感ないような気もしますが……)
他の開始/終了型注記で、
[#傍点]……[#傍点終わり]
[#傍線]……[#傍線終わり]
[#太字]……[#太字終わり]
[#斜体]……[#斜体終わり]
などのケースは、文字装飾を示していることが誤解の余地なく明らかであるため、本来は
[#傍点親文字]……[#傍点親文字終わり]
であるものが、
[#傍点]……[#傍点終わり]
となっていても違和感がありません。
また、
[#中見出し]……[#中見出し終わり]
[#縦中横]……[#縦中横終わり]
[#割り注]……[#割り注終わり]
などのケースは、開始/終了タグではさまれてる内容がタグの文言と一致しているため、
これも誤解の余地がありません。
しかし、
[#注記]……[#注記終わり]
とあったら、どう思うでしょうか。……の部分が注記であると考える以外にありません。それが、
[#注記]……[#「○○」の注記終わり]
であったとしても同様です(なんだか分らなさが増しています)。
「ママ」などの記法をマークアップすることについては、本質的に文字装飾タイプでも、[#中見出し]のようなタイプでもなく、
|……《○○》
というルビ形式の特殊版と捉えるべきでしょう。
しかし、「|」はルビに使うので、他の開始記号が必要。[#注記]で始めると、そこから注記が始まると思ってしまう。
ならば、[#注記対象]で始めてはどうかという提案です。
|……《○○》
の特殊版で、
|……《「○○」の注記》
から
[#注記対象]……[#「○○」の注記]
になったと捉えるならば、終了タグに「~終わり」と入っていないことに違和感はありません。
これは、捉え方を変えると
……[#「……」の(左に)「○○」の注記]
という現行の記法に対し、開始記号を定義して、「「……」の」の部分を省略できるようにしたものとも言えます。
以上から、
[#注記対象]……[#(左に)「○○」の注記]
または、「~終わり」がないことが気持ち悪ければ、若干冗長ではありますが、
[#注記対象]……[#(左に)「○○」の注記対象終わり]
が良いと思います。これを、「対象」が冗長だからと省略しても良いだろうと考えて、
[#注記]……[#(左に)「○○」の注記終わり]
としてしまうと読んだときの意味が変わってしまうことには注意が必要です。
また、Twitterでも書きましたが、補足情報(注記)が主情報(注記される文字列)より先に現れるのは、
@KAN0U さんと同じく違和感があり、開始タグに注記内容を含めるスタイルには反対です。
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/5 二度目
既存の開始/終了側注記は、以下の点で一貫しています。
開始側と終了側に字句の同一性があり、終了側に「終わり」が入っている。
開始/終了側注記で左パターンのあるものは、以下の点で一貫しています。
開始側に「左に」が入る。
終了側にも「左に」が入る。
ご提案の以下の形は、論理的に明快です。
ただし、その他の注記との親和性は低いです。
[#注記対象]……[#(左に)「○○」の注記]
[#注記対象]……[#(左に)「○○」の注記対象終わり]
「ルビ注記」という呼び方は、前方参照型に用いておらず、その点では、これも例外的です。
ただ、「ルビ注記」と言えば、親文字を探す感覚が生じると思いました。
傍点、傍線、太字、斜体と同様に、本来は
[#傍点親文字]……[#傍点親文字終わり]
のはずのものが、
[#傍点]……[#傍点終わり]
となっても、受け入れ可能と同様の感覚で、
[#ルビ注記親文字]……[#「○○」のルビ注記親文字終わり]
が、
[#ルビ注記]……[#「○○」のルビ注記終わり]
となっていると、受け入れられないかと期待します。
論理的に明らかであってほしいのはもちろんですが、注記全体の作法とも親和性をもってほしいです。
[#(左に)ルビ注記]……[#(左に)「○○」のルビ注記終わり]
という形に、落としどころを求めてはどうでしょうか。
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 2010/10/10
[#ルビ注記]……[#ルビ注記終わり]
は、
[#次の範囲はルビ注記である]……[#ルビ注記終わり]
[#次の範囲はルビ注記が付く対象である]……[#ルビ注記が付く対象終わり]
のどちらか自明ではありません。
「ルビ注記」の部分が「割り注」や「傍線」である場合は、
[#次の範囲は割り注が付く対象である]……[#割り注が付く対象終わり]
[#次の範囲は傍線である]……[#傍線終わり]
とは思わないので、本来は
[#次の範囲は割り注である]……[#割り注終わり]
[#次の範囲は(左に)傍線が付く対象である]……[#(左に)傍線が付く対象終わり]
であるものを
[#割り注]……[#割り注終わり]
[#(左に)傍線]……[#(左に)傍線終わり]
と省略できました。
しかし、いわゆる「ルビ注記」の場合は、これまでの他の開始/終了型タグと異なり、この点が明らかではないため、
省略には注意が必要だと思います。
言葉を尽くして書けば、
[#次の範囲は(左に)ルビ注記が付く対象である]……[#(左に)「○○」のルビ注記が付く対象終わり]
であるものを、
[#(左に)ルビ注記]……[#(左に)「○○」のルビ注記終わり]
とまで省略すると、それ自体なのかその対象なのか分からなくなるため、
[#(左に)ルビ注記が付く対象]……[#(左に)「○○」のルビ注記が付く対象終わり]
[#(左に)ルビ注記付]……[#(左に)「○○」のルビ注記付終わり]
と省略する分には誤解なく読めると思います。
より一般的な用語を使えば、
[#(左に)行間注付き]……[#(左に)「○○」の行間注付き終わり]
としてはどうでしょうか。
例えば、
理論家の説と政治家の事[#割り注]ポリチカルマタル[#割り注終わり]とは大に区別あるものなり。
理論家の説と[#行間注]政治家の事[#「ポリチカルマタル」の行間注終わり]とは大に区別あるものなり。
と並べてみると、極めて類似したタグにも関わらず、意味整合性が取れていないことが分かります。
これが、
理論家の説と[#行間注付き]政治家の事[#「ポリチカルマタル」の行間注付き終わり]とは大に区別あるものなり。
であれば、注記全体との親和性も保ちつつ、誤解もなくせます。
このように、
[#(左に)行間注付き]……[#(左に)「○○」の行間注付き終わり]
とすれば
開始側と終了側に字句の同一性があり、終了側に「終わり」が入っている。
開始側に「左に」が入る。
終了側にも「左に」が入る。
という条件をクリアしつつ、誤解もなくせますが、不具合はありますでしょうか。
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/10
「付き」を添えることで、ご指摘の通り、「何が何につくか」の関係が明確になります。
長くなりますが、そうした方がいいと思います。
それ一つをとれば、「行間注」には曇りがありません。ただ、既存の編集、印刷用語とのなじみは薄く感じます。
「ルビ注記」の方が、親和性があると私は思います。
内田さんが「ruby annotation」にあてておられる、「ルビ注」ではとも思いましたが、前方参照型で「注記」と使っているので、やはり「ルビ注記」の方が無難かと。
http://www.asahi-net.or.jp/~sd5a-ucd/PR-ruby/index.html.ja.sjis
前方参照型の用語とも同一性があれば、それにこしたことはありません。
2SC1815Jさんのご指摘にそいながら、そらもようの提案を、次のように変えてはどうでしょうか。
[#ルビ注記付き]……[#「○○」のルビ注記付き終わり]
[#左にルビ注記付き]……[#左に「○○」のルビ注記付き終わり]
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 20101010-2
「TR X 0110:2005, DSSSL多機能組版ライブラリ」
http://www.y-adagio.com/public/standards/std_lst_jtp.htm
を見ると、次のように「行間注」が示されています。

「DTPエキスパート受験サポートガイド: 合格への20日間特訓」 では、さまざまな注の形式が挙げられており「行間注」についてもTR X0110と同じ説明です。
ある教材出版社のページ では、理科の教材について「まとめページの赤字の行間注は非常に便利です。」とコメントがあり、
その教科書では http://www.kogaku-pub.com/product/pdf/10000204.pdf のように、after側の行間に注が付いています。
「"行間注"」で検索すると、
「ドイツ語版聖書として最初に行間注を組み入れて」
「難しい言葉には行間注で説明を加えました。」(21世紀版 少年少女日本文学館全20巻の版面画像)
「〔〕内は『群書類従』の行間注。」
「半角数字や傍点、ルビ、行間注等の処理に問題あり。修正してもらう。」(ある出版社の社長さんのブログ)
などなど、さまざまな例が出てくるので、必ずしも「なじみが薄い」用語と断言はできないのではないでしょうか。
「ルビ注記」とは、訳せば「ruby annotation」であって、ご指摘の内田さんの
http://www.asahi-net.or.jp/~sd5a-ucd/PR-ruby/index.html.ja.sjis にあるように
日本語で言う“ルビ”であるところの「ruby annotation」
ですから、そう考えると「ルビ注記」とは結局「ルビ」に他ならないのだと思います。
一方の「行間注」という用語については、一般的に使われてもいて、もしその用語を知らない人でも「行間にある注」のことだと
明らかである点で、青空文庫で今回「ルビ注記」という造語するよりも好ましいと個人的には思います。
ただ、「ルビのように付く注記」(本来ルビ自体が注記なので、ルビのようにつく注記というのは同語反復ですが)と
「行間注」が同じものを指しているのかは、より広く確認を求めた方が良いと思います。
『古筆と写経』という本の「源氏物語初期古注釈の問題」では、単に「傍書」や「行間書入」と呼ばれていたりもしますし。
http://books.google.co.jp/books?id=9Pyj3uXJhN8C&lpg=PA23&ots=L3nrr6Zkep&pg=PA22#v=onepage&q&f=false
例えば「割り注」という用語を知らずに「二行注」などと造語を作ってしまったら後から恥ずかしいように、
今回の対象についても正しい用語があてられるのが一番だと思っています。
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/17
今回、開始/終了型を決めようとしているものは、ルビのうち、親文字に、読みを示す形ではなく、注釈として付くタイプのものです。
ルビは、「どの文字に付いているか」という親文字との対応が明確です。
ルビはまた、語句からなる例がほとんどだと思います。
一方ご指摘の「行間注」は、注の一形態です。
注は、対象となるものが語句の場合もあれば、文の場合も、複数の文や段落、さらにそれ以上のまとまりの場合もあり得ます。
注自体も、語句からなる場合もあれば、文、あるいは複数の文によっても構成されます。
その注には、版面のどこに配置されるかによって、傍注、頭注、脚注、後注等があり、その一つに、行間注があるということでしょう。
ご指摘の「TR X 0110:2005, DSSSL多機能組版ライブラリ」でも、注については4.10で、ルビについては4.20で説明されており、行間注は前者で扱われています。
行間注はその形も、言葉も、私の頭にはこれまで、入っていませんでした。(組版の知識が不足していますね。)
それゆえ、検討している注記にこれを用いることには、違和感がありました。
これはルビではなく、注の一形態であると認識した今も、適当でないと思います。
「ルビ注記」が同義反復的であり、それは「ルビ」じゃないかというのは、その通りです。
[#ルビ付き]……[#「○○」のルビ付き終わり]
[#左にルビ付き]……[#左に「○○」のルビ付き終わり]
とした方が、それ自体をとってみれば、より望ましいと思います。
ただ、開設当初にマニュアルを作る際に、以下のように書くと決めました。
吹喋[#「喋」に「ママ」の注記]
個人的にはその際、「注記」ではなく「ルビ」としておけば良かったと思います。
ですが、そのように決めて、以来積み重ねてきた作業経験と、ファイルが存在しています。
その「注記」と「ルビ」の間で落としどころを求めるとすれば、「ルビ注記」あたりが無難ではないかと思います。
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/18
「ルビ注記」が同義反復的というのは、その通りだと思います。
ご提案の「付き」を採用するのなら、「ルビ」は省いても良い気がします。
この2週間にお話ししたことを踏まえ、以下ではどうでしょう?
[#(左に)注記付き]……[#(左に)「○○」の注記付き終わり]
▲ここで追記終わり
▼ここから富田追記 2010/10/19
開始/終了型の書き方を決めるところからスタートした今回の問題を、一歩引いて、一からきれいに解き直してはという提案が、twitterでありました。
http://twitter.com/satokazzz/status/27785273105
従来は、「注記」という言葉を用いてきた前方参照型を、「ルビ」を用いた、次の形に改める。
大空文庫[#「大空文庫」(の左)に「ママ」のルビ]
すでに作ってきたファイルがたくさんあるので、後処理側には「注記」と書いてきた従来のものと「ルビ」と書くこれからのもの、双方への対応をお願いする。
開始/終了型は、次のように定める。
[#(左に)ルビ付き]大空文庫[#(左に)「ママ」のルビ付き終わり]
というものです。
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 2010/10/19
前方参照型にも立ち帰って整理するというのは魅力的ではあります。
先方参照型と開始/終了型の対応関係を満たすことができる
大空文庫[#「大空文庫」(の左)に「ママ」のルビ付き]
[#(左に)ルビ付き]大空文庫[#(左に)「ママ」のルビ付き終わり]
という形も考えられるかもしれません。
ただ、富田さんがリンクを挙げられた @satokazzz さんは、そのつぶやきの直後に
「大切なのはどのルール(バージョン)で作成されたファイルかを明記すること」
http://twitter.com/satokazzz/status/27786634172
ともおっしゃっています。この条件には同感です。今年の春の新注記形式公開の際に自分も以下のようにつぶやきました。
「テキストの機械可読性を考えてくれるのなら、テキストに書式バージョンを記載して欲しい。携帯電話のような非力な環境のアプリでは、チェックすべき書式が増えると処理が遅くなるため、
冒頭でチェックすべき書式が判別できると助かります。 」
http://twitter.com/2SC1815J/status/11416034829
@satokazzz さんは、Zipファイルの中にメタ情報を記述したファイルを同梱するアイディアをお示しですが、この解法は今すぐに青空文庫で対応することは難しいのではないかと想像しています。
「どのルール(バージョン)で作成されたファイルかを明記すること」が満たされない場合は、上で述べたような処理側負荷増加の観点から、前方参照型に立ち帰って整理するのは個人的にはやや反対意見です。
また、前方参照型に立ち帰っての整理は影響が多いため、2週間と期間を区切られたなかの残り数日で、(もの言う/もの言わぬ)多くの関係者の同意が得られるか難しいのではないかと思いますが、期限を延ばすことはできそうでしょうか。
……[#「……」(の左)に「○○」のルビ]、[#(左に)ルビ付き]……[#(左に)「○○」のルビ付き終わり]案
次に、そうしたバージョン情報の必要性やコンセンサスを得る段取りのことを離れて、純粋に記法自体について考えてみます。
前方参照型を
大空文庫[#「大空文庫」(の左)に「ママ」のルビ]
という案ですが、既存の注記記法で左にルビが付く場合の書き方として注記一覧 http://www.aozora.gr.jp/annotation/etc.html に記載のある
青空文庫[#「青空文庫」の左に「あおぞらぶんこ」のルビ]
と全く重なってしまい、左に付く振り仮名の注記としてこれまで用いてきたものと、今回の(振り仮名ではない注釈としての)ルビの注記が全く同じになってしまいますが、この点は大丈夫でしょうか。
玉突き的に、これまでの振り仮名の注記の方も
青空文庫[#「青空文庫」の左に「あおぞらぶんこ」の振り仮名]
に改める手もあるかもしれませんが、話が大きくなりますね。
今回、ご提案の
……[#「……」(の左)に「○○」のルビ]
[#(左に)ルビ付き]……[#(左に)「○○」のルビ付き終わり]
とした場合は、この注記の意味が曖昧になります。
そして、そのことのメリットとデメリットがあります。
メリット
メリットとしては、「ルビ」という言葉が「形としてルビの体をなしているもの」とも解釈できるので、振り仮名も注釈も、その中間的なものも、すべてに適用して違和感がないことがあるでしょう。
例えば、下で富田さんが注釈と解釈する見解を示していらっしゃる、
「諭吉三枚」の「諭吉」に「一万円札」のルビ
といったケースでは、
諭吉[#「諭吉」に「一万円札」の注記]三枚
[#注記付き]諭吉[#「一万円札」の注記付き終わり]三枚
だと、「え、注記なのかな?それは」と思う人もいる(解釈が割れる)でしょうが、
諭吉[#「諭吉」に「一万円札」のルビ]三枚
[#ルビ付き]諭吉[#「一万円札」のルビ付き終わり]三枚
であれば、ルビを文字のそばに付く小さな文字(狭義に「ルビ=振り仮名」ではなく)と広義にとらえる感覚ゆえに異論は生じにくいでしょう。
デメリット
デメリットとしては、先ほど述べた、左に付く振り仮名の注記としてこれまで用いてきた記法と全く同じになってしまうことの他に、
[#「……」に「○○」のルビ]という表記に正に「ルビ」という単語が含まれているがため、明らかに振り仮名であって《》で入力すべきところ(狭義での「ルビ=振り仮名」な場所)にも、
……[#「……」(の左)に「○○」のルビ]の方を利用してしまいがち(逆もまた)になるのではないかという懸念があると思います。
つまり、
青空文庫《あおぞらぶんこ》
を
[#ルビ付き]青空文庫[#「あおぞらぶんこ」のルビ付き終わり]
としても違和感を覚えなかったり、
大空文庫[#「大空文庫」に「ママ」のルビ]
を
大空文庫《ママ》
としてしまったりすることや、
諭吉[#「諭吉」に「一万円札」のルビ]三枚
が
諭吉《一万円札》三枚
でなぜいけない、という議論が後々になってもFAQ的に発生しやすくなるかもしれません。
「形は同じでも目的・意味が違うものは違うようにマークアップするのだ」という理念からすると、目的・意味が違うものに同じ名前が付いているのは、混乱の元かなと思います。
ただし、先ほど述べたように、「敢えて」そのデメリットも併せ呑んで、広範囲に適用し得る
[#(左に)ルビ付き]……[#(左に)「○○」のルビ付き終わり]
を選択する考え方もあるかもしれませんが、適用例を今精査しなくても良い代わりに問題を将来に先送りしたことになりそうで、個人的にはあまり賛成できません。
今回の注記の対象が、「(ママ)」のように明らかに注記である場合を想定しているのであれば、
……[#「……」(の左)に「○○」の注記] (※現在のまま)
[#(左に)注記付き]……[#(左に)「○○」の注記付き終わり]
が落としどころかなと思います。
なお、10月4日の追記でも書きましたが、合印の記法はどうするのかという宿題があり、将来もしマークアップするようになったときに
[#(左に)注記付き]……[#(左に)「○○」の注記付き終わり]
という記法がバッティングしないかどうかは気にしておいた方がよいと思います。
最後に、参考資料として、Twitterに挙げたリンクをこちらにも再掲します。
「日本語組版処理の要件」(W3C Editor's draft 2009-11-17)で言及されている「行間注」の説明と組版例です。
http://www.w3.org/2007/02/japanese-layout/docs/aligned/japanese-layout-requirements-ja.html#ja-subheading3_2_1
「上記に掲げた注の形式以外に,学習参考書や歴史の教科書などで人物や事項の簡単な説明,古典の現代文への翻訳などを行間に配置する例がある.このように行間に配置する注の形式もある([図238]参照).行間注などとよばれている.」

[図238]: 行間に配置した注の例
「(ママ)」がルビと同じサイズで組まれている例:
http://books.google.co.jp/books?id=9Pyj3uXJhN8C&lpg=PA9&ots=L3nrr6Zkep&pg=PA9#v=onepage&q&f=false
上記と同じ文章の別ページで、行間に注がルビよりもやや大きいサイズで組まれている例:
http://books.google.co.jp/books?id=9Pyj3uXJhN8C&lpg=PA15&ots=L3nrr6Zkep&pg=PA15#v=onepage&q&f=false
富田さんの2010/10/17の追記を拝見すると、後者のようなもの(行間注)は今回の追加記法の対象ではないように読めましたが、その場合、まさに行間注そのものが現れたときにはどうしましょうか。
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 2010/10/20
用語の定義を共有していないと話が噛み合わなくなるので、念のため取り上げます。
JIS Z 8125「印刷用語 ― デジタル印刷」では、ルビを「文字及び語のそばに付けてその読み,意味などを示す小さな文字。」としています。
当然、JIS X 4051「日本語文書の組版方法」でも、W3C「日本語組版処理の要件」(JLReq)でも、その定義を引き継いで用いており、印刷用語としてはその捉え方が一般的と言えるでしょう。
文字や語のそばに付けて情報を付加するという役割は、ルビとは広い意味で注釈の役割を果たしていると言えます(20101010-2の追記で「本来ルビ自体が注記」と述べたのはそういう意味でです)。
ざっくり分類すると、次のようになると思います。
分類
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固有の名称
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例
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青空文庫での記法
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ルビのうち読みを示すもの
(読みの注釈)
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「振り仮名」と呼ばれる
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「人気のない場所」の「人気」に「ひとけ」のルビ
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人気《ひとけ》のない場所
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ルビのうち意味を示すもの
(意味の注釈)
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独立した呼び名はない?
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「顧客」に「クライアント」のルビ
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(これまで多くは)顧客《クライアント》
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ルビのうち注釈を示すもの
(メタな注釈)
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独立した呼び名はない?
(「行間注」と呼ぶのではと示してきました)
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「自働車」の「働」に「(ママ)」のルビ
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自働[#「働」に「(ママ)」の注記] 車 |
ところが、青空文庫の「注記一覧」を見ると、「ルビとルビのように付く文字」という表現が示すように、「ルビ=振り仮名」との解釈に基づいて記述されています。
同様に、『ルビのようにそえられた「ママ」』という表現が意図するところは、『振り仮名のようにそえられた「ママ」』ということでしょう。
(「ルビのように」ではなく、それは「文字のそばに付く小さな文字」という点でルビに他ならないのですから。)
ボタンの掛け違いという意味では、このあたりが混乱の原因なのではないでしょうか。
先ほどの分類のどこに属するか曖昧な用例について(複数の分類項目にまたがる用例もあるでしょう)、振り仮名注記側に振るか、注釈注記側に振るかですが、
基本的には振り仮名側に振る方が混乱が少ないかなと思います。
今回議題に挙がっている注記の対象は、「ママ」など注釈であることが明確であるいくつかのケースを対象とすることとして、抑制的な運用が良いのではないでしょうか。
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815J追記 2010/11/09
検討過程のみで結論が書いていなかったので、追記します。
2010年11月1日、「そらもよう」にて富田さんから、
……[#「……」(の左)に「○○」の注記]
に対応する、開始/終了型注記記法を
[#(左に)注記付き]……[#(左に)「○○」の注記付き終わり]
として新設する旨、お知らせがありました。
この記法に関するTwitterでの経過をまとめたものはこちら。
http://togetter.com/li/61118
この後の動き(新設した記法をtxt2xhtmlツールに反映させる)については、txt2xhtmlの問題点と対処に記載があります。
▲ここで追記終わり
▼ここから2SC1815Jさんへの富田の謝辞 2010年11月14日
こちらへの報告を欠いていました。
論議のリードと〆、ありがとうございます。
▲ここで謝辞終わり
文字のそばに付く小さな文字の区別について
(2010/10/12 2SC1815J)
音声読み上げのことなどを考えると、ルビの役割に応じて注記記法を変えることに賛成です。
(役割が違うものは異なるマークアップをした方が良いだろうという考え方にも賛成です。)
その上で、どのように使い分けるかについては、明確に判別できるケースばかりではないので少し考えてみます。
ここでは、文字のそばに付く小さな文字をルビと呼びます(狭義に「ルビ=振り仮名」ではなく)。
例えば、次のような場合は、振り仮名か注釈かどちらでしょうか。
1. 「人気のない場所」の「人気」に「ひとけ」のルビ(振り仮名)
2. 「client」に「クライアント」のルビ
3. 「顧客」に「クライアント」または「client」のルビ
4. 「諭吉三枚」の「諭吉」に「一万円札」のルビ
5. 「前向きに検討します」に「あまりあてにしないでくれ」のルビ
6. 「なげきの聖母像」に「ピエタ」のルビ
7. 「こんにちは」に「ハロー」のルビ
8. 「ゐる」の「ゐ」に「居」のルビ(振り漢字)
9. 「自働車」の「働」に「(ママ)」のルビ
10. 「自働車」の「働」に「(動)」のルビ(ルビより字が大きいケースもあるのでここに含めるか微妙?傍書または傍注と言うべきか)
1.および2.のケースは、漢字または欧文の単語の読み方を示すルビ(振り仮名)であって、青空文庫では《》で入力すると共通の判断が得られるでしょう。
9.および10.は、底本の著者(引用者)/編者/校訂者等が付けた注釈であり、かつ発音を示しているのではないため、……[#「……」に「○○」の注記]で入力することになるでしょう。
8.は、元々が仮名書きのもの(和歌など)を引用した場合に、仮名に対応する漢字が複数あり、意味を分かりやすくするために付けられることが多いと思いますが、
その意味では注釈であり、一方で親文字の発音とも一致しているという点では振り仮名的(振り漢字)であって、《》で入力するか、……[#「……」に「○○」の注記]で入力するか、
明確ではありません。
また、3.から7.はどうでしょうか。
これらは親文字と同じ発音を振っているのではなく、意味を示すルビと言えます(一括りにして良いか微妙ですが)。
このようなものは、《》で入力するか、……[#「……」に「○○」の注記]で入力するか、どちらでしょうか。
これまでは、これらの多くは《》で入力していると思います。
(例えば、注記一覧に挙がっている「霧の|ロンドン警視庁《スコットランドヤード》」など。夢野久作「難船小僧」に「S・O・S・BOY」のルビもこれらに含まれるでしょう。)
ここで、《》と……[#「……」に「○○」の注記]とで音声読み上げソフトでの読まれ方が違うと考えられるとすると、以下のような動作が期待できるかもしれません。
- 《》は親文字は読まずに振り仮名の方だけを読んでくれる
(親文字部分の機械の解釈による読みと重複させて「にんきひとけのないばしょ」とは読まず、「ひとけのないばしょ」と読んでくれる)
- 注記の場合は、親文字と併せて注記の内容を読んでくれる
このとき、1.および2.のケース以外を《》で入力すると、親文字部分を読んでくれないことになってしまいます。
しかし、わざわざ3.から7.の表現を取るからには、筆者にとって親文字もルビもどちらも伝えたいことでしょうから、どちらも読み上げられる方が良いだろうと思います。
とはいえ、これらをすべて[#「……」に「○○」の注記]で入力するのも現実的ではありません。
このようなことなども踏まえた上で、どのように注記の使い分けをするのが青空文庫としての考え方であるのか、実例(スキャン画像)を挙げつつ検討してみてはいかがでしょうか。
(この「文字のそばに付く小さな文字の区別について」セクションは2SC1815Jの私見であり、青空文庫の見解ではありません)
▼コメント 富田 2010/10/19
親文字の読みを示すものは、《》で良いと思います。(ローマ字もその範囲に含められると思うので、振り仮名と呼ぶことは避けます。)
それ以外は、注記が妥当と思います。
1.、2.、3.の「クライアント」、6.、7.は《》で。
3.の「client」、4.、5.、8.、9.、10.は注記で。
3.の「クライアント」、6.、7.は、親文字の同義語を併置しているともとれるし、同義語の読みをぶつけているとも考えられそうです。読みか注釈か、判断がわかれるでしょう。作業実績も、ばらつきがちになるでしょう。ではありますが、表音文字で書いてあって、当該箇所の読みがぶれなく決まるので、青空文庫の枠内では、《》が妥当と思います。
夢野久作「難船小僧」の「S・O・S・BOY」は、良い検討材料ですが、表題のルビは入力しないという方針でのぞんでいるので、そうした作業実績があるわけではありません。
▲コメント終わり
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